これぞブラック・ロックンロール!
リトル・リチャードから一曲を選ぶのは難しい
いきなり個人的な話になってしまうが、2014年11月に発刊された『ワイルド・ロックンロール・ディスク・ガイド 50’s & 60’s』では、”ブラック・ロックンロール”の特集頁の担当として、記事を寄与させていただいた。
↑ワイルド・ロックンロール・ディスク・ガイド50’S & 60’S
その時、編集責任者のジミー益子さんからは「リトル・リチャード等の定番アーティストも選んでくださいね。」と注文をいただいていた。が、しかしその時、リトル・リチャードのSpecialtyセッションを繰り返し聴き、考え過ぎてしまい、最終的には絞りきれずに、本書の中では選べないという、なんともな結果となってしまったのだ。。。
↑「Tutti Frutti」が収録されたファーストアルバム
そこでその時の事を挽回すべく、新たに立ち上げた本ブログで、リトル・リチャードの黄金期=Specialtyレーベル音源から、一曲を厳選しようと思い立った次第です。
「A-wop-bom-a-loo-mop-a-lomp-bom-bom!!」
1955年に録音〜発売された「Tutti Frutti」は、1956年にはリトル・リチャードにとっての初のメジャーヒット(US Pop #17- / R&B #2-)となり、曲の冒頭からワイルドなシャウトで迫る「A-wop-bom-a-loo-mop-a-lomp-bom-bom!!」のインパクトは強烈そのものであった。
無論、この手の作品がそれまで皆無だったかと言えば、そうではないかもしれないが、「Tutti Frutti」はあくまでメジャーヒットであり、メインストリームにおけるロックンロールの新たな方向性を示し、以降の影響力と言う点においては、凄い!と言わざるを得ない商業成績を叩き出す結果となった。
また、ロックンロール=激しい、ロックンロール=うるさい、ロックンロール=早い、…等といった、ロックンロールに対するイメージを最初に提示した最も顕著な作品だったのではないだろうかとも思います。
つまり、ロックンロールは理屈なんかじゃないという、シンプルかつ前衛的な理論と、合理性を持って、大衆的に広く受け入れられ、ロックンロールという一大ムーブメントの出発点において、ロックンロールの発展に大きく貢献した一曲であったと言えるのではないでしょうか。
クロスオーバーの重要性
リトル・リチャードのヒット後、すかさず人気白人歌手のパット・ブーンによるカヴァーが登場してきた。
↑人気歌手パット・ブーンによる「Tutti Frutti」のカヴァー
パット・ブーンによるバージョンは全米チャートで最高12位を記録し、本家リトル・リチャードのチャート記録を超える大ヒットとなった。
↑パット・ブーンの「Tutti Frutti」の7インチ
ママもPTAのおばさんもニッコリな、”優等生”サウンドに聞こえるパット・ブーンのバージョンは、個人的にはあまり趣味ではないが、当時のアメリカ人、特に白人のリスナーは、それ程に「Tutti Frutti」という曲を歓迎したという事になる。
↑リトル・リチャード本人によるパット・ブーンへの感想(英語)
そこで何か重要だったかというと、絵に描いた様な優等生タイプの歌手=パット・ブーンが、黒人音楽、すなわちR&B(リズム&ブルース)を取り上げたという点にある。しかもその取り上げ方が、白人マーケットを意識したクリーンな”仕上げ”によるものであった事が、メインストリームにおけるクロスオーバーにとっては重要な要素となった。
↑アーガイル柄の靴下がお洒落なパット・ブーンさん。ホワイトバック・シューズの50’s感も最高
それは具体的にどういう事だったかと言うと、パット・ブーンの「Tutti Frutti」を聞いた白人聴衆が、これは実はリトル・リチャードという黒人歌手のカヴァーであるという事を知り(リトル・リチャードの原作もヒットしているから、その事を知る機会は多かったと想像する)、白人聴衆側からR&Bへの理解と関心が高まったという点であろう。
以降、この様な”ソフィスティケーテッド”されたR&Bのカヴァーはメインストリームにおいて主流となった。
当時、「白人の音楽は白人のもの、黒人の音楽は黒人のもの」、という明確な住み分けがあったアメリカ社会において、このクロスオーバーがR&Bにとってはいかに革新的かつ、社会的地位向上の為に、重要な出来事であったかがお分かりいただけるはずだ。
そしてR&Bも、その事実を歓迎し、R&Bとポップスとのクロスオーバーは加速し始めた。
・Night Beat Recordsでリトル・リチャードの「Tutti Frutti」をさがす
・Night Beat Recordsでパット・ブーンの「Tutti Frutti」をさがす
Thanks for leading!